素晴らしきワインへの旅 - Voyage au vin merveilleux

素晴らしいワインとの出会いは、私たちの人生のなかでひとつの宝とも思える至福の時間を約束します。 このブログは、これらのワインの探求と出会いの記録です。

DRC 1974 Romanee Saint Vivant (ロマネ・サン・ヴィヴァン) 3L:2012年1月8日(日)ワイン専門平野弥で開かれたワイン会の報告

『ワイン専門平野弥テラスDEワイン会』
 2012年1月8日(日)テラス完成記念パーティー
テーマ:1974 Romanee Saint Vivant (ロマネ・サン・ヴィヴァン) 3L、D.R.C.(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)

2012年1月8日14:00頃から、参加される皆さんがお集まりになるなか、エスプリデュヴァンが輸入するブルゴーニュワインをフリーで試飲していただきました。
そして、15:40に1974年DRCロマネ・サン・ヴィ・ヴァン(3L)を抜栓しました。
その風味は、熟成のピークを超えて<幽玄なる古酒の世界>に入ったワインでした。

【1】コルクをあけた瞬間にあまいリキュールのような香りに魅了

コルクを開ける瞬間に甘いリキュールのような香りが立ち上がります。コルクの上部はしっかりしていて、液面につかっていた部分は、指で触れると崩れ落ちてしまいます。コルクを引き上げると最後の2〜3mmがボトルの内部に取り残されてしまいます。このコルクの状態は、38年間リ・コルク(コルクの打ち直し。コルクの寿命は20年といわれている)されることがなく、理想的な状態でワインが保管されてきたことを物語ります。

色調は、なかり薄いオレンジがかったレンガ色。グラスに注ぎ、時間をおくと赤みが増えてきます。(空気に触れて色調が変化することはよくあることです。)

香りは、渾然一体とした古酒特有の香り。ひとつひとつの香りの要素を区別することが難しいのも古酒ならでは。あえて、そのニュアンスを区別するとシェリーや上質のコニャック、甘いリキュール、紅茶の茶葉、トリュフ、そして干し葡萄のようなベリーの香り。

ボルドーワインの古酒の場合には、干しイチジクやなめし皮、スパイスなどのニュアンスが前面に出てきますが、こちのらワインは、ピノ・ノワールらしく、あくまでもベリー(干し葡萄)系の風味が中心です。やはり、古酒になってもピノ・ノワールは魅力的です。


【2】幽玄なる古酒の世界を表現

この品格のある風味は、最上級のピノ・ノワール(ロマネ・サンヴィヴァン)でこそ表現されるもの。

とくに味わいは、若いワインのように直接的な力の表現ではなく、長い時を経て円熟することにより到達した甘美なる世界に到達していました。渋味や酸味、甘味といった味わいの要素は、完全に超越し、統一された調和のみが存在するような世界がそこに表現されていました。

ところでこの古酒特有の風味を「紹興酒のような風味」と表現される方もいらっしゃいました。ワインの古酒にたいして「紹興酒のような風味」という例えは、大枠ではあたっています。より精密にみていくとワインの場合には、味わいのベースにある品のある酸味があくまでも葡萄由来のもので、特に今回のような高い品格は、ブルゴーニュボルドーグランクリュ・クラスのものでしか体験できないものです。

私個人としては、1904年シャトー・ディケム(2005年4月の平野弥ワイン会で試飲)に共通した熟成による甘さと格調の高さを今回の1974年DRCロマネ・サン・ヴィヴァンに感じました。古酒の世界では、赤、白の区別すら消えていくのだと改めで実感しました。

今回の、1974年DRCロマネ・サン・ヴィ・ヴァン(3L)魅力は、若い時代にこのワインが持っていた、生産者や産地、畑などの個性を表現する特徴が、消えて、より純粋で本質的な葡萄そのものの姿が表現されていました。それは、まるで、現世で抱えていたしがらみを脱ぎ捨て、天上の世界に昇天しつつある姿を表現しているようでもありました。

このようなワインに出会えることは、ワイン人生にとってひとつの喜びでもあります。

【補足】古酒と味覚的な嗜好の問題
私個人においては、もう20年以上前から、こうした古酒の世界に親しんできました。そのため、いわゆる通常のワインの世界とは、まったく次元のことなる古酒に出会うことがひとつの喜びと感じます。
しかし、「もう10年早く飲みたかった」と感想を述べてくれた方もいらしゃいました。
また、このような古酒然としたワインをはじめてお飲みになられる方もいらっしゃいました。
今回のワインは、大変、貴重な体験であったことは、間違いないと思いますが、こうした風味が受け入れられるかどうかは、また、個々人の味覚の嗜好性の問題に帰着すると思います。

もしも、今回の体験で、もっと古酒ワインを飲んでみたいと思われた方は、これまでとは違ったワインの新しい世界が目の前に広がっている思います。人生においてまたひとつの楽しみが増えたといえるでしょう。


【解説】
ノン・リコルクの古酒とリコルクの古酒では、その風味は、まったく異なります。

現在、流通している多くの古酒のなかで、リコルクされたワインは、約20年後ごとにコルクが打ち直される際に、若いワインが加えられ、そのつどワインの風味は若返ります。例えば、1900年代の初期のワインでも、比較的若い生命力を感じることができます。

他方、リコルクされないワインは、わたしたちのイメージ以上にワインは老いて、その風味は独特な<古酒の世界>を表現します。古酒がお好きな方が、ノン・リコルクのワインを珍重する理由もここにあるのです。

古酒ワインがどのような保存状態にあったのかを知る指標とは?

今回の1974年のDRCロマネ・サン・ヴィ・ヴァン(3L)は、前述したようにコルクの状態からして理想的な状態でワインが保管されてきたといえます。
ちなみに、若い時期に運悪く熱の影響を受けてしまったワインには、マディラのような香りが出てくる場合がありますが、今回は、そのような香りは、ありませんでした。
古酒には、かならず、コルク(ブション)の香りが少なからず付きます。しかし、まったく感じられないのは、良質のコルクが使用されたことに他なりません。