素晴らしきワインへの旅 - Voyage au vin merveilleux

素晴らしいワインとの出会いは、私たちの人生のなかでひとつの宝とも思える至福の時間を約束します。 このブログは、これらのワインの探求と出会いの記録です。

変化するドメーヌ・ルフレーヴ:2008年と2007年の比較

ブルゴーニュ、白ワインの最高の造り手であるドメーヌ・ルフレーヴの2008年のピュリニー・モンンラシェをはじめて飲んだのは、2010年6月13日に千葉県のあるお客様のお宅に招かれたときのことです。そこで、2008年のこのワインは、以前とすいぶんとスタイルが変わったなぁという感想を持ちました。

しかし、明確にドメーヌ・ルフレーヴのワイン造り=ワインのスタイルが変わったと判断するためには、その他のルフレーヴのワインを試飲する必要がありました。

そのような想いを抱いているある日のこと、フランス現地のある業者から、ルフレーヴのセラーに昨日行ったときに分けてもらったワインがあるというメールを受け取りました。直ぐに、メールでリストを受取り、即買いつけました。これで文字通り蔵出で完璧な状態なルフレーヴのワインを輸入することができると思いました。2011年6月に東京港に到着し、通関をきったワインは、今日まで三回試飲しました。

1)2011年7月20日、第一回目の試飲、2008年と2007年のクラヴァイヨンを比較
スタイルの違いは確認できたが、旅の疲れにより風味のバランスがいまひとつ。少ししがっかりしました。待つしかないと自分に言い聞かせつつ。
2)2011年8月13日 ワイン専門平野弥 ワイン教室
ここで2008年と2007年のスタイルの違いは明白にあらわれました。旅の疲れもとれ、随分と美味しくなりました。

・2007年 Puligny Montrachet Clavoillons(ピュリニー・モンラッシェ・クラヴァイヨン)
 繊細でデリケート、私の知っているルフレーヴは、これでした。

・2008年 Puligny Montrachet Clavoillons(ピュリニー・モンラッシェ・クラヴァイヨン)
 2007年のワインよりも肉厚で甘さが加わる印象。味覚の中心にある風味は、熟したグレープ・フルーツに少し甘さを加えたような味わい。酸のきれというよりも、果実味と旨味が強調されたスタイル。樽の風味は、同じピュリニーの生産者のルイ・カリヨンのスタイルに近い。

・2008年 Puligny Montrachet Les Pucelles(ピュリニー・モンラッシェ・レ・ピュセル)
 おそらく、今、飲んで、美味しいという人は沢山いると思う。しかし、ピュセルという畑名が表すような、純粋無垢なイメージ(精神的な美のイメージ)は、後景化され、着飾った健康的なボディー(肉体的な美のイメージ)が強調されます。味覚の奥にあるミネラルは、このボディーに隠され、一見するとグラン・クリュのようなワインに見えるかもしれません。こうゆうスタイルのピュセルに出会うとは、私のワイン人生では思って見なかったことです。時代はかわるものだとつくづく思います。
・2007年 Puligny Montrachet 1er Cru Les Folatieres(ピュリニー・モンラッシェ・1er・レ・フォラティエール)
 ここでの圧巻は、2007年フォラティエール。飲んでいて、思わず、うまいなぁーという言葉が心の底からでてくる。ピエール・モレ氏の時代のルフレーヴの到達点を見た思いがした。約2時間ほどおくと、ドメーヌ・ドーヴネのオーセイ・デュレス・レ・クルーにそっくりな風味に変化した。これにもびっくりした。
・2007年 Batard Montrachet(バタール・モンラッシェ)
そして、さらに圧巻は、2007年バタール・モンラッシェでした。
並みの生産者のモンラシェよりも断然上です。複雑性と完璧な調和の世界。

ワイン教室のレポートはこちらでご覧いただけます。横浜基点 ワインの探索: ブラインドによるワインテイスティング講座  2011年8月

後日談。
この試飲の話を聞いたIKさんが、ドメーヌ・ピエール・モレのワインを持ってきてくれた。
ピエール・モレ氏は、2007年までルフレーヴの醸造責任者と務めていた。
私は、このルフレーヴの比較試飲のあと、2007年までのルフレーヴのワインのスタイルとは何かをあらためて考えてみました。ピエール・モレ氏がみずからのドメーヌで造るドメーヌ・ピエール・モレのワインに新樽率を高くして、艶を与えたスタイルが、まさに2007年までのドメーヌ・ルフレーブのスタイルであると私は、解釈しました。香りのやさしいふわっとした香り立ちや、酸味と旨味、ミネラルの調和(比率)は、まさしく、ドメーヌ・ピエール・モレのワインのスタイルであったといえると思います。(2011年8月28日)