素晴らしきワインへの旅 - Voyage au vin merveilleux

素晴らしいワインとの出会いは、私たちの人生のなかでひとつの宝とも思える至福の時間を約束します。 このブログは、これらのワインの探求と出会いの記録です。

素晴らしいワイン生産者との出会い-フランス大使館企業振興部-ユビフランス東京主催試飲商談会にて


2010年6月1日に都内で開催されたユビフランス東京主催試飲商談会にて、素晴らしい生産者と出会うことができました。
この日は、レストラン『vin et cuisine A.k.』の木村さんとともに会場を廻りました。
当日、コート・デュ・ローヌやラングドックなどの南フランスでコストパフォーマンスの高いワインを中心に試飲していました。一巡して、最後に、ジオロジー(地質学)をラベルにデザインしているボトルが陳列されているブースがありました。いわく、テロワールを表現しているとか。

  • 対照的な白ワイン

まず、ためしに、Argil(粘土質)の白ワイン、次にCalcaire(石灰岩)、どちらもフレッシュで風味のバランスがとれ、とても美味しい。それぞれの前者は力強く、後者は、繊細な点が地質を表現しています。

  • 圧巻された赤ワイン

次に非常に非常に驚かされたのは赤ワインでした。とくに地質からくるアロマが実によくその特徴を表していて、本当に同じ造りで地質が異なるだけなのか?と疑問がわいたほでした。

    • Marnes(マール、泥灰土)の赤

泥灰土といえば、ジュラ地方のピノ・ノアールか、ブルゴーニュでいえば、モレ・サン・ドニを想いだします。グラスに注がれて、非常に驚かされました。実に、ブルゴーニュのモレ・サン・ドニにあるようなミネラルとアロマを感じるのです。品種はピノ・ノワールではありません。ベリーのフルーツのアロマにすこしマットで下に沈みこむようなミネラルのニュアンスが一体化している点はまさにモレ・サン・ドニを彷彿とさせます。
正直いいまして、この赤ワインを試飲するまでは、半信半疑でした。しかし、このワインのあまりの素晴らしさに、俄然としてエンジンがかかってしまいました。
そして期待を裏切らず、次々と試飲した赤ワインは、全て素晴らしいく、最後に思わず生産者の方と握手をしていました。

    • Schit(シスト、片岩)の赤

次に飲みたいと思ったのは、シストの赤。鉄分も含まれていると聞くと、そうだと答え。ならば、コート・ロティーのアロマを期待して、グランスに注いでもらうと、まったくその通りで、マチルド・イヴ・ガングロフのコート・ロティー・バルバリーヌを飲んでいるよう。

    • 火山性土壌の赤

香りは、アルザス地方でやはり火山性土壌の白ワインを想いだしました。ランゲン・ド・タン、ドメーヌ・ショフィットが造るタンの村のグランクリュの畑は非常に個性的で、石灰をまた含まないため、力強く腰のある風味になります。赤と白の違いはありますが、これほど明白に土質の個性が表現されることに圧倒されてしまいました。

これは、ブルゴーニュのジュヴレ・シャンベルタンのようなアロマにビックり。

    • その他 Galets(小石)の赤,Pouding(礫岩)の赤,などなど。

すべてのワインが美酒であり、知的好奇心が大いに刺激されるワインでした。レストラン『vin et cuisine A.k.』の木村さんも絶賛でした。

  • 生産者に話を聞くと
    • まず、これだけ多様な土質の畑からワインを造ることができるのは、契約栽培農家から葡萄を買っているため。
    • モンペリエ大学醸造学部のチームといっしょにこれらのワインを造っている。
    • 品質が高いのは、低収量のため。一ヘクタール当り30キロヘクトリットル。
    • 2006年よりこれらのワインのシリーズを造り始めた。
  • 一般的にテロワールを問題にする際に、同一品種、同一醸造方法をとりながらも明確に香り味わいの違いが生まれる根拠としてテロワールの存在が指摘されます。しかし、このワインは、明確に土壌、土質の違いをはっきりと表現することを目的に造られています。そこで、ひとつの疑問が生まれるます。はたして、同一酵母でこれだけのアロマの違いが生まれるのかどうか。そこで質問をしてみると、地質によって、酵母を変えているようでした。詳細は、聞くことができませんでしたが、この生産者の考えには、テロワールのtypicité (ティピシテ)を表現するために酵母を選択するということが、明白に位置づいていると思えました。


  • 生産者名:Thierry Rodriguez (ティエリー・ロドリゲス)
  • 最後に私の考えですが
    • これらのワインは、テロワールや葡萄畑の土質が与えるワインの風味の違いを理解するための素晴らしい教材となりえると思います。
    • それゆえに、プロ・フェショナルな仕事についている人は、必ず飲むべきワインのひとつとして挙げられなければなりません。
    • また、ワイン愛好家にとっては、ワインの楽しみ方がひとつ増えることを意味します。品種、生産者などの個性に加え、葡萄の畑の地質、土壌の違いがワインの風味に与えるニュアンスの違いを見ていくことができるからです。しかも、この地質、土壌の違いは、おそらく、ワインの酸の組成の違いとして現れ、したがって、料理との相性(マリアージュ)というテーマもより多様化されることを意味することでしょう。
    • 最後に、こうしたワインが生み出される時代になったのだなと実感します。まさに20世紀には存在していなかったワインですから、現代のワインは何か?ということを考察する際に、ひとつの重要な位置を占めるワインであると思います。