素晴らしきワインへの旅 - Voyage au vin merveilleux

素晴らしいワインとの出会いは、私たちの人生のなかでひとつの宝とも思える至福の時間を約束します。 このブログは、これらのワインの探求と出会いの記録です。

2008年フランソワ・ミクルスキー ムルソーの試飲結果

2008年のミクルスキーのムルソーを、通関後約1週間以内に試飲した。(2011年5月15日試飲)

まず、第一の印象は、とても自然なワインということ。樽での「化粧」とはまったく無縁な世界がそこには表現されているように思えて、とても鮮烈な印象を持った。

この「自然」という意味は、ビオなどの自然派のワインにたいして使用する意味ではなく、ひとつの精神的な世界に広がるイメージを表現している。それは、香りをかいでいると<大自然の中に立ち大いなる緑の木々たちを前に風をうけているようなイメージが精神世界で広がり、雄大ですがすがしい気持になる(なった)>ということ。

第二に、口に含むと柑橘のフルーツ類にあるような酸味に旨味を不思議と感じたことが非常に新鮮でかつ印象的だった。

「不思議」と思ったのは、「旨味」とは、アミノ酸系の物質に起因するものと私の頭は、覚えていて、例えば、コント・ラフォンのムルソーには、その典型的な「旨味」を感じる。しかし、このミクルスキーのムルソーには、このアミノ酸系ではないフルーツにあるような旨味を感じたので、その絶妙な旨味に「あっぱれ!」と心の中で叫んでしまった。

ところで、ブルゴーニュの白ワインのトレンドが<フレッシュ&フルーティー>なスタイルへと変化してから10年間の年月が過ぎた。2008年ミクルスキーのムルソーは、ある意味で、この10年間のなかで<フレンシュ&フルーティームルソー>の完成形を見たように思った。これが、第三の印象で、かつ、ある種の感動すら覚えた。というのも、フレッシュ&フルティーな白を追求する場合の難しさは、ステンレスタンクで低温発酵された低価格の白ワインとの違いを表現するのが非常に難しく、一歩間違うとその差が分からなくなるからだ。
その差を出すポイントは、収穫量を極端に低く抑えることによりミネラルを強調する方法か、あるいは、アルコール発酵及び樽熟成の過程でバトナージュによりアミノ酸系の旨味を抽出するか、だが、ミクルスキーのムルソーは、前者のタイプ。ミネラルを非常に強く感じ、ミネラルのニュアンスとワインのその他の要素の比率は、シャブリの比率に近い。もちろん、ミネラルが強いといっても、シャブリにあるような石灰系の土壌からくるミネラルのニュアンスとは異なり、それは、典型的なムルソーのミネラルで、少し重く、複雑さと奥行きを持ち、牛蒡などの根菜にあるようなやや泥臭さを伴うニュアンスだ。

過去の株式会社エスプリデュヴァンの扱ったワインの中で、2005年のアラン・コシュ・ブイヨのムルソーも似たタイプだ。
この経験からいうと2008年ミクルスキーのムルソーは、あと1年ほどセラーで熟成させると風味に奥行きとバランスとれて、美味しく飲める域に達すると思える。
もしも、今夏、消費するのであれば、<<暑さの中で心からリフレッシュできる優美なるムルソー>>とでも表現できる風味だ。この意味で新たなワインライフを提案するワインでもあると思える。

以上のように考えてくると、この2008年ミクルスキーのムルソーは、多くの方々のお飲みいただきたく、その為には、高く販売はしたくないワインだ。